発達障がいのこどもはYouTubeに依存しやすい!?ADHDとネット依存の関係
発達障がいのこどもはYouTubeに依存しやすい!?ADHDとネット依存の関係
「YouTubeなど動画ばかりずっと見続けている」
「スマホでゲームやSNSの時間が長すぎて心配」
YouTubeをいつまでも見続けていて、こどもの成長に心配を感じている親御さんは少なくないのではないでしょうか。生まれたときからスマートフォンが身近にある現代のこどもたち。デジタルネイティブといわれるように、ある程度YouTubeの時間が長いのもしかたのないことかもしれません。
しかし、YouTubeなどがやめられないこどもさんのなかには、発達障がいの症状が隠れていることも。発達障がいの特性のために、依存しやすくなっている可能性があるのです。
そこで今回の記事では、こどもがYouTubeをやめられない原因やその理由、発達障がいとの関係についてご紹介します。
発達障がいの症状によってYouTubeがやめられない?
発達障がいのうちADHD(注意欠陥多動性障がい)のあるこどもさんは、YouTubeなどスマホに依存しやすいといわれています。
もちろん、大人も夢中になるスマホです。こどもならYouTubeやゲームに必死になっていつまでも見続けてしまうことは無理もないでしょう。
しかし、定型発達のこどもたちに比べて、明らかに一度YouTubeを見始めると止めることができない、親が何をいっても言うことを聞いてくれない、という悩みを抱える親御さんは発達障がいのあるこどもに多く見られる相談です。
なぜYouTubeはやめられないのか
スマートフォンで見る「動画」にはいくつかの種類があります。映画やドラマ、アニメをはじめテレビ番組なども気軽にスマートフォンやパソコンで視聴できる動画の種類です。
ただし、発達障がいを抱えるこどもをもつ親御さんの困りごとの多くは、YouTubeが問題になっています。
YouTubeは他の映画やドラマ、アニメなどの動画とどのような違いがあるのでしょうか。
まず、YouTubeそのものの仕様から考えていきましょう。
YouTubeは、10分程度の動画が多く集まっています。なかには1分単位のショート動画や数十分以上の長時間の動画もありますが、次々と見てしまうのは10分〜15分くらいの動画ではないでしょうか。
とくにYouTubeには自動再生機能があるため、オンにしていると延々と関連する動画が再生し続けます。つまり、自分でやめようと決めるまで、自分に興味や関心の深い動画が次々に自動で映しだされるのです。
また、最近のYouTubeはこどもをターゲットにしたバラエティ的なチャンネルが増えています。同じ世代のこどもたちがYouTuberとして活躍して楽しいことをやっていたり、大人たちが自分の日常生活では体験できないようなことを発信していると、こどもたちの好奇心に深く刺さって、いつまでも見てしまいたくなるのでしょう。
動画を見続けると脳内は興奮状態になる
YouTubeをはじめデジタルの動画には依存性があります。脳内のドーパミンという神経伝達物質が活性化されて、動画を見続けたくなるのです。
神経伝達物質にはいくつかの種類があります。そのうちドーパミンには、脳の働きを活性化したり、興奮状態にさせる働きがあります。
つまり、動画を見ると脳の興奮状態が高まって中毒的になるのです。頭が快感を覚えてまた見たくなる。その相乗効果で、いつまでも見続けたくなってしまいます。
ドーパミンは人のモチベーションにも作用する脳内物質です。そのため、ドーパミンそのものは大切な働きを担っています。
発達障がいのこどもの2つの特性を知ろう
問題は、発達障がいのこどもたちの特性にあるのです。
まず、発達障がいのうち、とくにADHDのあるこどもは、気持ちや環境の切り替えやコントロールが苦手です。「これくらいYouTubeを見たら、次の行動に移ろう」とか「今日はYouTubeを見すぎたから、控えよう」といって制御が効きづらく、動画をやめられなくなってしまうのです。
また、親御さんがYouTubeを見続けるこどもを心配して注意したり、叱り続けると、かえってこどもはYouTubeのことが気になってしまいます。いわゆる「シロクマ効果」と呼ばれる現象です。つまり、「鶴の恩返し」のように、見てはいけない、やってはいけないといわれると、かえってやりたくなってしまう気持ちが増幅されてしまします。
さらに、発達に遅れが見られるこどもは、時間の流れを上手に意識することが不得手です。つまり、何時間も過ぎているのに数十分くらいの時間感覚しか感じていない、といった好きなことに熱中しているとよくある現象をいつも感じやすくなっています。
そのため、こども本人からすれば、まだちょっとしか時間が経っていないと感じているのです。そのため、親御さんが「1時間経ったからもう終わりね」とか「いつまでダラダラと見続けているの!?」と注意しても、ピンとこないこどもも多く見られます。
とくにYouTubeはゲームよりも中毒性が高いコンテンツです。ゲームは自分のスキルが低かったり、努力が足りなかったりすると、次のステージを攻略する、レベルアップすることが難しいタイプのものも少なくありません。
一方で、興味や関心度の高い動画が次々と再生されるYouTubeの場合、時間を決めていてもゲームや他の遊びより依存しやすく、やめさせようとしてもずっと見続けてしまうこどもさんが多くいます。
このほか、親御さんにとっては、YouTubeをスマートフォンでずっと見続けてくれるなら、静かで良いからと、小さい頃からついつい見させてしまっていて、それが習慣化しているケースも少なくないようです。
YouTubeのメリットをうまく使う
こどもたちにとってネガティブな語られ方がされがちなYouTubeですが、使い方によってはメリットもあります。
たとえば、YouTubeの動画のなかには無料で楽しく学習ができたり、知らない情報をうまく発信していたりするものも多くあります。
こどもの好きなことばかりのジャンルに限ってしまうと問題ですが、学習や社会勉強のひとつとして捉えれば、これほど手軽で効果的な学習ツールはないといえるでしょう。
とくに最近は学校でもタブレットや動画による授業が進んでいて、デジタルコンテンツによる学習は欠かせないものになっています。
発達障がいのこどもたちは主体的に行動したり、さまざまな人たちと関わるチャンスが限られる場合が多かったりするため、YouTubeの動画を大切な情報を受け取る窓口として取り入れてしまってはいかがでしょうか。
YouTubeを見て親子で話し合おう
YouTubeを見続けるとただ大量の情報を受け取るだけになってしまいます。受け身の姿勢のままでは、依存性も高くなって漫然と見続けてしまうのも無理はありません。
そこで、学習に役立つYouTubeの動画を見たときは、家族でその内容について話し合う機会を作りましょう。
インプットがメインのYouTubeですが、意識的にアウトップットの機会を作り出すことによって、その動画から学んだこと、日常生活に活かせることを確認したり、家族で情報をシェアして異なる感想や意見を出し合ったりすれば、YouTubeの動画を生きた教材として活かすことができます。
YouTubeは本と違って、10分程度で誰でも気軽に視聴できるコンテンツです。そのため、忙しい親御さんでも、休日や夜の団らんで一緒に動画を見て、お互いの知識や興味・関心を共有するようにしていきましょう。
YouTubeとうまく付き合うために親ができること
大切な情報ツールとして活用できるYouTube。しかし、気を抜けばすぐにダラダラと見続けてしまうものになってしまいます。
こどもがYouTubeとうまく付き合って、適切な時間だけ楽しむ、時間が来たら気持ちを切り替える、といったことにつなげられるような方法を考えてみましょう。
1.YouTubeを見始める前に時間と動画を決めておく
YouTubeに関して親御さんができる大切なポイントは、適切な声掛けをすることです。とくに事前に声掛けをして、どんな動画をどのくらいの時間見るのか、親子で確認しておきましょう。
大切なことは、親御さんが一方的に時間や動画の種類を決めるのではなくて、あくまでこどもさん本人が主体的に決めるサポートに徹することです。
たとえ親に言われたからといっても、自分が決めたルールであれば、他人から言われるよりもルールを守りやすくなって、モチベーションも維持できます。
もし最初でこども自身でうまく決められないようだったら、しばらくは親御さんから動画の種類や時間を提案して、選ばせましょう。
少なくとも、すべて決めて従わせるより、選択肢から自分が選んだだけでもやる気が変わってきます。
慣れてきたら、「今日のYouTubeはどんな動画を見るつもりなの?」とか「今日はどのくらいの時間、見たい感じ?」などと、声掛けするくらいで良くなってきます。
とくに、どの動画を見るか、どのくらい時間を見るかの2つの明確に決めるようにサポートしてください。
あわせて、YouTubeの時間が終わったら、その次の行動を親子で確認し合いましょう。
「YouTubeを見たら、夕飯を食べようね」
「動画を楽しんだら、お風呂に入ろう」
などと次の行動のイメージを言葉で伝える、イラストでそばに置いておくといった工夫が大切です。
ADHDのあるこどもたちは、自分でスケジュールを管理することが苦手です。そのため、A→B→Cと時間の使い方を順番にイメージしづらい特徴を持っています。
YouTubeを見始める前に、しっかりとその後のイメージをさせておくと、気持ちの切り替えにも役立つはずです。
2.マイルールを決めさせておく
年齢が上がってきて、YouTubeの動画の種類や時間が守られるようになってきたら、YouTubeに依存しやすい理由を一緒に考えてみましょう。
小さなこどもは、YouTubeに夢中になっていること自体、ほとんど意識できていません。好きな物だから、ずっと見続けている、といった感覚です。
ある程度、脳の発達段階が上がってきたところで、YouTubeがやめられないとき、どうすればいいかマイルールを決めるようにフォローしてみてください。
時計を意識する、アラームを使う、時間が来たらスマホを親御さんに返す、など、こどもたちが自主的にルールを決めて守らせるようにするのです。
親から言われたルールは守りたがらないかもしれませんが、自分で決めたルールは守らなければいけないという気持ちが働くでしょう。
こうした声掛けを繰り返しながら、こどもたちがYouTubeがやめられない状態から少しずつ改善できるようにリードしてあげてください。
YouTube以外のネット依存にも注意しよう
スマートフォンのなかでも、動画、とりわけYouTubeは中毒性が高く、親御さんの悩みの種になっています。ただし、ネット依存が全国的な社会問題になっている現在、動画以外にもSNSやオンラインゲームなどを利用する時間が長く、こどもの成長に問題があるのではないかと指摘する研究も進んできました。
たとえば、群馬大学の伊藤賢一氏による「小中学生のネット依存に関するリスク要因の探究 ― 群馬県前橋市調査より ―」によると、文科省の全国データと群馬県前橋市の地方のデータを比較しても、ネット依存の割合は差が見られないことが指摘されています。
第一に,アンケート調査を通じて,ネット依存の高リスク使用群と潜在的リスク使用群がどの程度観測されるのか調べ,全国平均と比べた前橋市の小中学生の状態を確かめた。結果的には,全国とほぼ同じ程度の高リスク使用群が観察され,潜在的リスク使用群もある程度観察された。
第二に,ネット依存が疑われた小中学生が使用しているネットサービスを調べ,LINE や動画サイト,オンラインゲームはやはり過度のネット利用に結びつきやすいことが確認された。また,小学校においては男子のゲームと動画サイト,中学においては女子の LINE と動画サイト,ツイッターがネット依存に結びついている可能性が示された
このように、ネット依存の可能性の高い小中学生はYouTubeなどの動画サイトをはじめ、LINEなどのSNS、そしてオンラインゲームによって長時間、時間を費やしている傾向がわかります。
YouTubeとこどもの問題は、家庭だけでなく、教育現場でも大きな課題の一つとなっています。単にスマートフォンを禁止する、制限するだけでは済まないほど、社会に浸透してしまったデジタルツールだからこそ、親子でしっかりと話し合いながら、ルールを守ったYouTubeの利用が欠かせなくないのです。
まとめ:発達障がいのこどもはYouTubeに依存しやすい!?ADHDとネット依存の関係
発達障がいのあるこどもさんをお持ちの親御さんの相談で、よく聞く「YouTubeがやめられない」という悩みごと。実際にYouTubeは依存しやすいデジタルツールで、上手な付き合いが求められます。
YouTubeを見始める前には、必ず声掛けをしてマイルールに則った適切な視聴ができるように親御さんがサポートしていきましょう。
また、放課後や休日の時間を家庭以外の環境で過ごしてみるのもおすすめです。「デジタルデトックス」と呼ばれるように、数時間、自宅とは異なるスマートフォンをあまり使わない状況になれば、こどもたちも他の遊びに熱中できるようになります。
たとえば、放課後等デイサービス(放デイ)もYouTubeの時間を減らして、学習やソーシャルスキルトレーニング、運動プログラムなどの時間を取り入れることができる、おすすめの施設です。
もし自宅でずっとYouTubeがやめられないと心配な親御さんは、放デイなど発達支援のプロが集まる施設の利用を考えてみましょう。
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