発達障がいのこどもの叱り方とは?正しいしつけのための伝え方②
前回の1回目の記事では、こどもの成長するペースに合わせた叱り方でしつけをすることの大切さをお伝えしました。
発達障がいのあるこどもの育児では「ついついガミガミ怒ってしまう」「必要以上に叱ってしまう」など、しつけの問題で悩む親御さんが多く見られます。こどもが日常生活でさまざまなことをうまくできなかったり、ルールや決まり事をすぐに破って守れなかったりすると、キツく注意して当たってしまった、という経験を持つ親御さんは少なくありません。
ただし、発達障がいを抱えるこどもは、成長するペースや生活リズムに特性があります。そのため、親の視点だけで過度な期待から叱り続けていると、こどもはどんどん自信を失ってしまうのです。
そこで今回の記事では、発達障がいのこどもの間違った叱り方について考えていきます。
適切な叱り方で正しいしつけを
発達障がいのあるこどものしつけでも、適切に叱ることは必要です。「こどもをのびのびと育てたい」「叱ると自信をなくして無気力になってしまうのではないか」といった心配を感じる親御さんの気持ちもよくわかります。しかし、こどもの成長に役立つ叱り方であれば、生活スキルを身につけたり、心の成長につながるきっかけになったりします。
ルールを守れない、親のいったことの反対のことばかりする、いたずれをする。
こうした親の気持ちを逆なでするようなこどもの行動は、お子さんが立派に成長している証しです。こどもたちは親御さんが自分を見ているかどうかを確かめるため、わざと「注意ひき行動」をするのです。注意獲得行動とも呼ばれていて、小さなこどもが成長していくなかで必ず通る道といえます。
いたずらをしたからといって無視したり、過度に注意したりするのはよくありません。こどもが親御さんに求めているのは、安心感です。親子の距離感が少しずつ適切なところまで離れていく「母子分離」のために必要なプロセスで、こどもたちが自立をして他のこどもたちや社会の大人たちとの関わりを持てるようになるベースになります。
そのため、感情的にガミガミ怒ってしまうのはよくありません。いたずらをしたらすぐにその場で叱ること、つまり、「保護者である大人はこどものあなたをしっかりいつでも見ていますよ」というサインを送り続けることが大切です。こうした適切な叱り方を繰り返していくなかで、こどもは人間関係の基礎的なスキルや社会のルールを少しずつ学んでいきます。
発達障がいのあるこどもに対する間違った叱り方とは
発達障がいのあるこどもの場合は、発達のペースの偏りからできることとできないことが極端だったり、思うように生活習慣が身につかなかったりするケースが多くあります。
だからといって、必要以上に叱ってしまうと発達障がいの特性でこどもに悪影響を与える心配があるため、注意が必要です。
ささいなことでもすぐにキツく叱る、感情的になってガミガミ怒ってしまう、その場の感覚で叱ってしまい何がOKで何がダメなのが、こどもが混乱するような叱り方をする、こどもの存在を否定するような言葉を投げつける、といった叱り方は適切ではありません。
とくに次の3つの感じで叱ってしまっていませんか。
1.「どうしてこんなことするの!?」「なぜできないの!?」と叱る
こどもの叱り方でよく耳にするフレーズに「どうしてこんなことやったの!?」というものがあります。定型発達のこどもの場合、いたずらややらなかったことを叱られているとストレートに伝わる叱り方です。
しかし、発達障がいのあるこどもの場合、その障害の特性によって叱られていると感じない場合があります。
たとえば、自閉症スペクトラム症(ASD)のこどもたちは、言葉の裏側にある真意を読み取るのが苦手です。言葉を文字通りに受け取ってしまう傾向が強いので、「どうしてこんなことしたの!?」と言われれば、いたずらややらなかったことの理由を延々と話し続ける場合がよく見られます。
「なぜ?」と親が理由を聞いているのだから、その理由をちゃんと説明している、と発達障がいのあるこどもは自信を持って答えるでしょう。
しかし、こどもにするとちゃんと理由を説明した、またはうまく説明できなかったのにもかかわらず、親御さんから叱られてしまうと、なぜ怒られているのかがわかりません。叱られている理由がわからないまま、ただ注意されつづけているので、反省させたいために発する言葉がかえってこどもを混乱させてしまって、自信を失わせるきっかけになっていきます。
そのため、発達障がいのあるこどもを叱るときは、「どうして?」「なぜ?」というような、理由を聞くかたちになってしまうフレーズはできるだけ避けることが大切です。
2.名前だけで叱る
名前だけで叱る、というのは「Aくん、ダメでしょ!」「こら!Bちゃん!」というように、大きな声を上げてこどもの言動を注意する方法です。
じつは、発達障がいの特性で、ただ名前だけを呼ぶ叱り方は、こどもに伝わっていない場合が少なくありません。
定型発達のこどもの場合、大きな声で名前を呼びかけられれば、いたずらをしたから怒られた、と親御さんの言葉の裏を読み取ることができます。
しかし、自閉症スペクトラム症など発達障がいのこどもの場合は、言葉をそのまま受け取る、相手のニュアンスや空気を読むのが苦手、といった特性で「ただ名前を呼ばれた」「声をかけられたから返事だけした」と取ってしまうことが多いのです。
そのため、もし名前を呼びかけて叱るときは「Aくん、宿題をこれからすぐにやり始めて!」とか「Bちゃん!おもちゃを出したままにせずに、片付けなさい」といったように、名前にプラスしてどうして叱っているのかがわかるような言葉で呼びかけることが大切です。
3.怒鳴る、からだを叩く
発達障がいのあるこどもは、感覚が鋭敏で、ちょっとした環境の変化でパニックを起こすことが少なくありません。急に大きな声で怒鳴られると、それだけで叱ること以上に強い刺激になって、頭が混乱する、不安に襲われる、といった状態に陥りかねません。
また、とっさにからだを叩いたり、つかんだりするのも、NGです。発達障がいのあるこども、定型発達のこどもよりもからだに触られることが敏感で苦手なので、その後適切な叱り方で伝えようとしても話が入ってこなくなってしまいます。
発達障がいの特性を知った上で、適切に叱るには、こどものペースやリズムを崩さない配慮が必要となります。
まとめ:発達障がいのこどもの叱り方とは?正しいしつけのための伝え方②
今回の記事では、こどもがなぜいたずらやルールを守れないのか、成長のプロセスの視点からご紹介しました。また、発達障がいの特性を踏まえないで間違った叱り方をしてしまう具体的なケースを解説しました。
生まれつき脳の働きに偏りがある発達障がいのあるこどもたちの叱り方は、定型発達のこどもとはちがった配慮が必要なケースが少なくありません。言葉の捉え方が苦手だったり、環境への変化になじむのが困難だったりするため、こどもの立場になって叱ることが大切です。
そこで3回目の次回の記事では、発達障がいのあるお子さんへの上手な叱り方をご紹介します。
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