発達障がいのこどもは治る?病気と障がいの違いと知っておきたい支援方法(1)
発達障がいは病気ではなく、生まれつき脳機能に偏りがある特性です。生まれもったそのこどもの特徴や個性のため、病気が発症することとは根本的に異なります。そのため、発達障がいそのものが治ることはありません。
ただ、発達障がいの特性はこどもによって現れる時期に違いがあるため、生後間もなく発達障がいの傾向が現れる場合もあれば、大きくなってから徐々に日常生活で困りごとが増えて発達障がいがわかるケースもあるなど、さまざまです。
また、最近は発達障がいの治療薬も登場しているため、医療を受ければ治ると思われている場合もあるようです。
では、発達障がいの治療や支援はどのようにすればいいのでしょうか。
そこで今回は2回に分けて、発達障がいのこどものサポート方法について紹介します。こどもが生きづらさを感じにくくなり、日常生活や社会生活を安心して過ごせるようにしていく支援のあり方を考えていきましょう。
発達障がいそのものは「治る」ことはない
発達障がいは病気ではありません。あくまで生まれつきの特性なので、発達障がいそのものを根治治療は存在しません。ただ、発達障がいを原因に現れるさまざな症状を対処療法によってコントロールすることは可能です。
こうした発達障がいでの治療について考えるには、次の6つの主な発達障がいの種類を知っておく必要があります。
- 自閉症スペクトラム症(ASD)
- ADHD(注意欠如・多動症)
- 学習障がい(LD)
- 知的障がい(ID)
- コミュニケーション障害(CD)
- 運動障がい(MD)
なかでも1番目と2番目の「自閉症スペクトラム症(ASD)、ADHD(注意欠如・多動症)」は、発達障がいを代表する種類で、「治療薬」が使われるケースが増えています。
では、ひとつずつ見ていきましょう。
自閉症スペクトラム症(ASD)
対人関係など社会生活での困難さや、こだわり行動などが見られます。
ADHD(注意欠如・多動症)
不注意(集中力が乏しい)・多動性(じっとしていられない)・衝動性(後先考えずに行動してしまう)の3つの要素がこどもによってさまざな割合で現れます。
学習障がい(LD)
知的な発達の遅れは見られないものの、読み書きや計算といった基礎的学習能力が困難なタイプです。
知的障がい(ID)
知的発達が全体的に遅れる発達障がいです。
コミュニケーション障害(CD)
言葉の理解や使い方に問題が生じる言語障害と、対人関係で困難さが現れる社会的コミュニケーション障がいが特徴です。ただし、自閉症スペクトラム症(ASD)と違い、こだわり行動は見られません。
運動障がい(MD)
極端に体を動かすのが不器用な発達性協調運動障がいや、突発的な動きや突然音声を出すといったチック障害が知られています。
なお、現在は、これらの発達障がいは病気ではなく、あくまでこども一人ひとりの特性ととらえる考え方が一般的です。そのため、発達障がいそのものを直して押さえ込むような根本的な治療ではなく、周囲の大人たちが適切な療育や支援、そして発達障がいの特性により起こる二次障害の対処や治療を行うことが大切と考えられています。
二次障害とは
二次障害とは、一次障害である発達障がいをきっかけに日常生活や社会生活でさまざまな二次的な問題が生じることです。大きく分けて内在化障害と外在化障害があり、次のような特徴があります。
内在化障害
内在化障害は、心身の健康状態に何らかの問題が生じて、社会生活で支障をきたす困難さをいいます。例えば、うつ病や統合失調症、境界性パーソナリティ障害、適応障害、強迫性障害をはじめ、摂食障害、睡眠障害、頭痛や腹痛など不定愁訴、自律神経失調症などがあります。
外在化障害
外在化障害とは、精神的なストレスや行き場のない感情をこども自身の外側に向かって表現しようとする行動です。例えば、反抗挑発障害、素行障害、反応性アタッチメント障害をはじめ暴力や万引きといった反社会的行動や犯罪行為などがあります。
なぜ二次障害が起きるのか
発達障がいそのものは、こどもの個性のひとつなので問題ではありません。特性に合わせて、一人ひとりに適切な支援を行うことで健全な成長をサポートできます。
一方で、発達障がいの特性に対するサポートがうまくいかない場合、周囲の環境によって二次障害が起きる場合があります。
原因の多くは、虐待や親のうつといった親の精神的な問題や、貧困や災害、学校でのいじめなどです。また、対人関係やこだわり行動、不注意や学習能力の困難さといった発達障がいの特性によって成功体験が少ないと、自信が身につかないほか人間としての未熟さや依存性が強くなることがあります。さらに、不安や緊張が強く、抑うつや怒りなどの精神的な問題も加わって、さまざまな二次障害が発生するのです。
なお、二次障害は家庭や学校では対応しきれないケースが多いため、医療機関や児童相談所など専門機関も入って対処していくことがポイントです。
まとめ:発達障がいのこどもは治る?病気と障がいの違いと知っておきたい支援方法(1)
発達障がいの特性により起こる二次障害には、精神的な問題と社会行動面での問題の2種類があります。
ただ、発達障がいは病気ではないため、根本治療をすることはできません。適切な発達支援を通して、健全な成長をサポートしていくことがポイントです。
ただ、二次障害を治すための治療は一部可能です。そのためにはどのような治療法があるのでしょうか。
そこで次の2回目の記事では、発達障がいは治るものなのか、治療法やサポート方法を中心に紹介します。
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