発達障がいのこどものこだわりが強い理由とは?ワガママとの違いや対応方法〈その1〉
発達障がいの中でも、自閉スペクトラム症(ASD)のこどもは「こだわりの強さ」といった特性がよく見られます。
「同じ服装や食べ物ばかり好む」
「自分だけのルールや順番があって融通がきかない」
こうした強いこだわりのため、日常生活で困っている親御さんは多いのではないでしょうか。
そこで今回から2回にわたって、発達障がいのこどものこだわりの強さの理由や適切な対応について解説していきます。
こだわりの強さは自閉スペクトラム症(ASD)の特性
発達障がいには主に次の3つの種類があります。
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- ADHD(注意欠陥多動性障がい)
- 学習障がい(LD)
このうち、物事に強いこだわりを見せるのがASDのこどもたちです。
自閉スペクトラム症(ASD)は、乳幼児期から以下のような症状が目立ち始めます。
- 視線が合わない
- 笑顔に対して反応が薄い
- 指さしをあまりしない
- 言葉の発達の遅れがある
- こだわりが強い
- 感覚が過敏/鈍麻
このように、言葉や表情、身振りなどによるコミュニケーションが苦手だったり、強いこだわりが見られ、極端に興味や関心が偏っていたりといった特徴を持つ発達障がいです。生まれつきの脳機能の偏りで現れるため、育て方やしつけといった後天的な原因ではありません。
ASDのこだわりの強さが表れると特定の物や場所に強い執着を見せたり、急な予定変更といった突発的な環境変化でパニックになったり、など、日常生活で支障をきたすことも少なくありません。
こだわりの強さによる行動の特徴とは
強いこだわりによって生まれる行動には、次の3つの特徴があります。
- 同じ物事や場所に執着する
- 些細な変化も対応できない
- 未知の環境を嫌がる
1.同じ物事や場所に執着する
- 自分が好きな遊びや行動ばかり繰り返す
- 他の対象に切り替えるのが下手
- 体を同じ方向に動かし続ける
一例)好きな電車やアニメばかり追いかける、偏食傾向が強い、遊びの時間を切り上げられない
2.些細な変化も対応できない
- こども自身だけのマイルールがある
- 独自の生活習慣がこなせないとパニックになる
一例)学校の登校ルートから少しでも逸れると行きたがらない、お気に入りの服装でないと外出できない
3.未知の環境を嫌がる
- 新しい環境に馴染みにくい
- 想定しにくい状況を受け入れづらい
一例)レジに行列ができていると買い物せずに帰りたがる
なお、どのような物事にこだわりの強さを見せるかは、こどもによってさまざまです。したがって、こども一人ひとりに合わせて理解をしていかなければなりません。
強いこだわりが見られるよくあるシーン
もう少し具体的にこだわりの強さによって生まれる日常的なシーンを見ていきましょう。
乳幼児期の場合、好き嫌いや偏食が目立ちます。同じ食品でもメーカーが異なるとまったく受け付けないこともよくある話です。
また、同じ服ばかり着ようとしたり、特定の映画やドラマ、アニメ、動画を繰り返し見たがります。遊び方にも強いこだわりがあって、おもちゃを一定間隔で並べていく、極端に水遊びが好き、キラキラしたもの、室外機などクルクル回転する物をずっと見ている、といった行動もこだわりによる行動の具体例です。
小学校に上がって成長するにつれて、こだわりの強さや対象が変化していきます。学校への登校ルートや下校ルートはいつも同じ道でないといけなかったり、食べ方にマイルールがあったり、ゲームや試合で一番にならないとイライラしてしまったりします。
さらに、自分で決めた時間や行動に従って予定通りに進めなければ気が済みません。このほか、自分の話題ばかり話し続けたり、同じ質問を何度も繰り返したりするため、対人関係で問題が生じることも多くあります。
強いこだわりはワガママな性格?
スーパーでお菓子やおもちゃを買ってとねだるこどもを見かけることがありますが、あまりレベルがひどいと「こどものワガママが過ぎる」「親のしつけがなっていない」などと思われる場合があります。
ただ、ASDのこどもがこだわりの強さで起こす行動は、ワガママや自分勝手といった性格などの問題ではありません。あくまで発達障がいの特性が強く出ているため起きる問題です。
こだわりによる行動は、社会と折り合いがついて人間関係にトラブルが出なかったり、日常生活に支障をきたさなかったりする場合は、あまり問題になることはありません。ただし、障害特性のため特定の物事に対するこだわりの強さが表れるので、ワガママなどの性格や親のしつけといった教育によってコントロールするのは難しいものです。
無理矢理こだわり行動を抑えようとしたり、ただ叱って怒るだけでは解決しないどころか、こどものストレスを大きくして自尊心を傷つけてしまいます。
まとめ:発達障がいのこどものこだわりが強い理由とは?ワガママとの違いや対応方法〈その1〉
こどもの強いこだわりは、発達障がいのなかでも自閉スペクトラム症(ASD)によく見られる特性です。生まれつき脳機能の働きによって、特定の物事やルールに執着してしまうため、ワガママやしつけの問題とは切り離して考える必要があります。
親が叱って怒るだけでは、こども本人も強いこだわりをコントロールできないため、こどもの気持ちを傷つけたり、ストレスによって余計にこだわり行動が強まるケースが考えられます。
では、こどもが強いこだわりの行動をした場合、どのような対応をすればいいのでしょうか。後半の次回の記事で解説します。
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