発達障がいのこどもは不安が強いってホント!?不安の原因とその対処法を考えよう①
発達障がいのこどもは不安が強いことがよく知られています。海外の研究はもちろんのこと、最近では国内の研究でも発達障がいをもつこどもは不安が強く、日常生活でさまざまなことを怖がったり、心配が多いことが明らかになりました。
こどもの不安が強い傾向が強くなればなるほど、こどもの健全な成長のために必要な機会や経験を避けるケースが増えてしまいます。人とのコミュニケーションが苦手だからと友だちや周囲の大人たちとの関わりを避ける、評価されるのが怖くて学習や運動、趣味などでチャレンジをしなくなる、など、不安の強さは心身の成長にも支障をきたしかねません。場合によっては不登校や引きこもり、ソーシャルスキルが乏しいなど、発達障がいそのものの一時的問題だけでなく生活面や精神面などの二次的問題に発展する可能性が高くなります。
今回は、不安が強い発達障がいのこどもをテーマに2回に分けてご案内します。前半の今回は発達障がいのこどもの特徴に不安が強い特徴や理由をまとめてご紹介します。
発達障がいをもつこどもは不安が強い
2019年6月、国際的な心理学雑誌「Journal of Autism and Developmental Disorders」に国内の共同研究グループによる発達障がいのこどもの不安に関する調査報告が掲載されました。
鳥取大学教育支援・国際交流推進機構の石本雄真准教授らは、国内の6〜12歳の発達障がいを抱えるこどもたちを対象にした調査で、発達障がいをもつこどもはもたないこどもに比べてはっきりと不安が高いことが明らかになりました。とくに、自閉症スペクトラム症(ASD)のこどもの不安が強いことが特徴です。
これまで、日本国内では発達障がいをもつこどもが日常生活で不安が強いことにスポットを当てた調査はありませんでした。そこで、共同研究グループでは、発達障がいをもつこどもが通所する放課後等デイサービスの利用者を対象に調査を開始。こどもの不安の尺度を6種類に分けて調査をおこないました。
・分離不安障害
・社会恐怖
・強迫性障害
・パニック発作・広場恐怖
・外傷恐怖
・全般性不安障害
どの不安の尺度でも、発達障がいをもつこどもはもたないこどもに比べて不安が強いことが明らかになりました。
とりわけ、発達障がいをもつこどものうち、ASDの診断を受けているこどもは強迫性障害やパニック・広場恐怖をはじめすべての不安尺度で高い得点となっています。
また、発達障がいをもつこどもともたないこどもの行動的な問題(二次的問題)を次の4つの尺度で調査しました。
・問題行動
・多動
・友人関係の問題
・他者への手助け
すると、他者への手助け以外の尺度で男子、女子ともに一般のこどもより発達障がいをもつこどものほうが問題が出やすい結果が出ました。
このように、海外ではデータとして明らかだった発達障がいをもつこどもの不安の強さは、国内でも同様の結果であることがわかりました。不安の強さは、ただ単にこどものメンタル面のアンバランスだけではなく、日常生活のさまざまな場面で支障をきたします。そのため、社会で生きる上で必要なソーシャルスキルや人との良好な関わりを維持するコミュニケーションスキルが乏しくなって、二次的な問題につながることが問題です。
日本では、学習を支援する、日常生活でのスキルを訓練する、といった方面では教育や福祉の分野でさまざまなアプローチが続けられている一方で、発達障がいをもつこどもが抱える不安を和らげる、メンタルヘルスのケアにつなげる、といった角度での支援は今後ますますその必要性が高まるといえます。したがって、発達障がいをもつこどもの教育支援の現場で、不安をケアするような具体的な支援が期待されます。
発達障がいの有無によってこどもの不安が強い特徴が色濃く現れることを覚えておきましょう。
なぜASDのこどもは不安が強いのか
発達障がいをもつこどもの不安の強さに関する調査結果で、とりわけ自閉症スペクトラム症(ASD)をもつこどもは不安が強いことが明らかになりました。
そもそも自閉症スペクトラム症とはどのような発達障がいなのでしょうか。
対人関係が苦手でコミュニケーションスキルが乏しい、興味や関心、行動に偏りがある、といった特徴をもつ自閉症スペクトラム症(ASD)。アスペルガー症候群と呼ばれる場合もあります。
かつて、自閉症スペクトラム症は親のしつけや育て方の問題といわれることがありましたが、現在は脳の機能の偏りによるものと考えられています。感情や認知を司る脳の一部の機能に異常が現れているためです。したがって、先天的に次のような特性(症状)を持つことがわかっています。
・言葉の遅れがある
・何かしたいときに相手の手を対象物に持っていく(クレーン現象)
・おもちゃをずっと並べる
・扇風機や洗濯機、室外機など回転するものが好き
・ひとり遊びが好き
・自分だけのルールがあるためパターンが変わるとパニックを起こす
・行動や気持ちの切り替えが苦手
・空気が読めないため、失言や相手を傷つける言葉を言ってしまう
・表情が乏しい
・想定外のことが起こると対処できずパニックになる
・感覚が過敏/感覚が鈍感
・手先が不器用
・ひとつのことをやり遂げるのが苦手
・細かいことが気になる
・過去の嫌な思い出を思い出して不安感や焦燥感が出る
こうした自閉症スペクトラム症の特性は、社会生活を送るときに大きなストレスになりやすいことがポイントです。自分なりのやり方やルールがあったり、コミュニケーションを取るのが苦手だったりすること自体も日常生活では支障をきたしますが、そうした体験を繰り返す度に本人が自信を失ったり、周囲の人たちとの人間関係がこじれていったりする問題が深刻といえます。やがて、不登校や引きこもり、人とのコミュニケーションに恐怖を覚えるなど、生活全般で不安を抱えるこどもになっていくのです。
まとめ:発達障がいのこどもは不安が強いってホント!?不安の原因とその対処法を考えよう
最近発表された国内の調査結果を見ても、発達障がいのこどもは不安が強い傾向がはっきりとわかりました。とくに自閉症スペクトラム症(ASD)のこどもは一般のこどもや他の発達障がいをもつこどもに比べて、より不安が強い状態で過ごしています。
不安が強い理由は、発達障がいの特性や症状、そして二次的問題によってメンタル的に不安定になりやすいからと考えられます。
次回の後半では、不安が強い発達障がいをもつこどもに対して、どのような対応をすればいいのか、その対処法を考えていきましょう。
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