発達障がいのこどもに抜毛症が多い理由は?髪の毛を抜いてしまう原因や対処法を知ろう①
発達障がいのこどもたちの中で、自分の髪の毛や体毛をむしり取らずにいられないこどもを見かけるときがあります。
「イライラすると髪の毛や眉毛を抜いてしまう」
「抜いた髪の毛や眉毛を食べてしまう」
このような症状に悩んでいる親御さんはいませんか。
専門用語で「抜毛症(ばつもうしょう)」と呼ばれる症状です。
こどもの頃に発症しやすく、とくに発達障がいのこどもたちのなかには髪の毛を抜くのが癖になっているこどもがいます。
そこで2回にわたって、発達障がいのこどもたちに起きやすい抜毛症の症状やその原因、予防や対処法についてご紹介します。
髪の毛を触る癖は病気かも?
誰でも、イライラしたときや、暇でしかたがないとき、無意識に髪の毛をいじったり、頭皮をかいたりした経験があるでしょう。
こどもの育児で悩んだとき、ついつい頭をかきむしってしまい、手に髪の毛が何本も付いていた、といったことはありませんか。
日常生活でストレスがかかったとき、何気なく髪の毛を触る、枝毛を探してしまう、抜きたくなる、という程度なら問題はありません。
ですが、些細なことがきっかけになったり、ふと気づいたら、自分の髪の毛をかきむしって抜いていたり、など習慣になっている場合は要注意です。
もしかすると、精神医学の分野で「抜毛症(ばつもうしょう)」と呼ばれる疾患の可能性があります。
抜毛症の主な症状
一般的に、ストレスで髪の毛をかきむしるイメージが強い精神疾患ですが、髪の毛だけとは限りません。
眉毛やまつ毛など、人によって全身の体毛で抜きたくなる部位が異なります。
自分自身で繰り返し髪の毛や眉毛、まつ毛などを抜くのがやめられません。
症状の程度によって、脱毛状態のままになってしまいます。
症状のタイプには、次の2つがあります。
①自覚型抜毛症
衝動的に何かをやりたくなるのを抑えたい、思考や感情をコントロールしたい、といった目的で髪の毛などを抜いてしまいます。
髪の毛を抜きたいという欲求を自分で分かっていることがポイントです。
②無意識型抜毛症
不安や退屈な気持ちを何気なく解消したくて、気づくとついついやってしまうケースです。
抜毛するのは髪の毛だけとは限らない
抜毛症の患者の大半は、髪の毛を抜きます。
眉毛やまつ毛を抜く人も少なくありません。
ただ、人によってワキ毛や陰毛、手や足の体毛、男性の場合はひげを自分で引き抜いてしまうケースもあります。
円形脱毛症との違いは?
さて、髪の毛と関わりのある精神疾患で円形脱毛症があります。
ストレスで勝手に髪の毛が抜けてしまう病気です。
脱毛状態の皮膚を見ると、円形脱毛症の場合は自然に毛髪が抜けて薄くなるので頭皮にダメージはありません。
また、脱毛のしかたも、丸い形です。
一方で、抜毛症の場合は、自分自身で毛を抜き続けるため、抜毛症のこどもの皮膚は赤く腫れています。
また、まばらで不規則な脱毛状態になっているのも特徴です。
抜毛症の原因と症状の特徴
自覚型や無意識型に共通する抜毛症の原因は慢性的なストレスや衝動性です。
また、強迫性障害の一種であるとする説もあります。
このほか、脳が働くときに命令を電気信号で受け渡しする神経細胞(ニューロン)の伝達に何らかの支障が生まれるから、といった見方も最近出てきました。
抜毛症が発症しやすい年代と性別
抜毛症は、小学校低学年から中学生の思春期のこどもで症状が現れ始めるケースが多いです。また、一度発症すると、大人になっても治らないまま、髪の毛などを抜くことが習慣になってやめられない人も少なくありません。
かつてはどちらかというと女性に多いと言われてきました。しかし、現在では、成人の男性にも増加している傾向があります。
抜毛症の症状の移り変わり
軽い症状の場合と症状が重くなった場合とでは、次のような経過をたどるケースが一般的です。
▼軽い症状の場合
無意識型の場合は、自分が気づかぬうちに髪の毛を抜いてしまっていると本人自身が認識できれば、症状が治まる場合もあります。
また、ストレスや不快な環境など抜毛症の原因が改善されると、症状も減っていくケースが少なくありません。
▼重い症状の場合
本人を取り巻く環境やストレスが長年にわたって心の重荷になってしまっていると、こども自身が抜毛症を自覚できた場合でも習慣が抜けきらず、症状を引きずる場合があります。
また、親や周囲の大人が、髪の毛を抜いたり、食べたりするたびにキツく注意をすると、メンタル的なストレスによってますます症状がこじれるのも気をつけたいポイントです。
「親に叱られるからやってはいけない」と思えば思うほど、髪の毛を抜きたくなる衝動が止まらなくなるような重度のケースも見られます。
抜毛症は小学校低学年から起きやすい理由
こどもは大人になるまで、自分の意思に反して生活環境をはじめ学校や放課後の過ごし方、夢や目標などを自由に決められない場合も多くあります。
たとえば、住む場所一つにしても、親が住んでいるからその家やそのエリアで暮らしているのはもちろんのこと、親の仕事や離婚など大人の事情がきっかけでまったく知らない土地に引っ越さなければならない場合もあります。
また、義務教育のうちは小学校や中学校に通って、さまざまな生い立ちや環境で育ったクラスメイトと最低1年間は共に集団生活をしなければなりません。
学校で同級生や先輩・後輩、先生との人間関係や学校の方針などで意に沿わないことが起こっても、我慢してそのまま日常生活を送るこどもが大半です。
進路で親から言われるままに、塾に通わさせられたり、中学受験に挑戦させられたりするこどももいるでしょう。
理不尽な状況を自分の意思で変えられる大人とちがって、こどもたちは自分の力で目の前の現実を変えられないまま、ストレスを抱えてしまいます。
このように、こども自身の気持ちや感情でどうにもならない状況が心の負担となって、そのストレス解消のために抜毛をしてしまうのです。
とくに自覚型の場合は、自分の意思で髪の毛や眉毛、まつ毛を抜くと、必ずスッキリした気持ちが得られるため、なかなか症状から抜け出ることは難しくなります。
小学校低学年から中学年にかけて、こどもたちは自我の形成とともに自分の周りの環境や状況に対する違和感を覚え始めます。
やがて、自分は周囲の友人や先生、大人たちからどう見られているか、客観的な見方が育ってきて他者が気になり始める時期と抜毛症が起きやすい時期とはタイミングが重なる点も重要です。
まとめ:発達障がいのこどもに抜毛症が多い理由は?髪の毛を抜いてしまう原因や対処法を知ろう①
発達障がいをもつこどもや小学校低学年から思春期のこどもに起きやすい抜毛症は、日頃のストレスや環境を変えられない状況をコントロールする精神疾患の一つです。
髪の毛を抜いたからといって、頭ごなしに叱ってしまうと、かえって症状がこじれて重症になる可能性があります。
こどもたちは大人が考えているよりも、本人自身の生活環境や進路や遊び、趣味を思うようにできないという欲求不満がたまっているものです。
そのため、抜毛症の症状が現れたら、なぜ抜毛してしまうのか、その裏側にある理由を考える必要があります。
発達障がいのこどもはとくに、抜毛症になるケースが多いといわれています。
そこで、次回の記事では、発達障がいと抜毛症の関係について、掘り下げていきましょう。
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